このカテゴリーの、二つ目の投稿は、時期の描写についてです。
この月日の記述は、時間の記述と相俟って、小説では、とても大切で、これがあるお陰で、季節と時間の情景が浮かぶわけです。
さて、普通であれば、これは当然、
- いちがつ
と読むんですが、文の前後の関係と、韻から、
- ひとつき
と読むかたも、少なからずにいるとは思います。
それで、日本語の書きかたとしては、
- 誰が
- いつ
- どこで
- 何をしたのか?
ということを覚えておくとよくて、雑誌や新聞の記事などには、この手法が顕著にみられます。 本当は、これに、もう少し加えたものがあり、それを、《5w1h法》と言います。
*人と話をするときにも、
《◯さんが、昨日、△で、遊んでいましたよ。》
などとすると、整理をされた情報として、相手に伝わりやすいわけです。
この《錠の1》でも、それは同じで、単にその前に、
- 凡その月日
- 凡その時間帯
- 登場人物の服装
の描写があるだけです。
勿論、上のリストのような描写があるお陰で、他のかたの文との区別が明瞭にもなり、新聞やら雑誌の記事と小説の体裁の違いでもありますが、昔のように、新聞記者さんから小説家となられたようなかたには、この用法を使われるかたも、多くにいます。
さて、ここでの、
《一月半ばは》
の
《は》
の使いかたは、少し特殊な用法で、現代の小説では、まず、お目に掛かることはなく、前の文との体裁を変えずに合わせると、
《吐く息が白い、一月半ばの〜》
という文章になる場合が多いかと思います。
ここでも、《一月》と《半ば》の間に、助詞がなく、【特殊な文章の型】で、これを、
- 無助詞
と言う手法である。としました。
この、《一月》と《半ば》の間には、普通であれば、《の》が入ります。
それで、何故、《の》を使わなかったのかを記せば、
《小説を昔の文体にしたかった。》
ということもありますが、日本人でさえ、だいたいにして、《一月半ば》と言うかたが多いことと、この文に続く文章にも、《の》が入るので、それが続くことを避けたかった。という理由があります。
他には、日本語の勉強と考えた場合に、色々な使いかたをしたものがあるほうが、勉強には便利だからです。
それで、特殊な用法である。と記したのは、この《は》は、係助詞というもので、
- 〜についていえば
といったような意味での使いかたをするんですが、
《一月の半ばについていえば、朝の十時頃に〜》
とすれば、
《一月の半ばのことを、語りますよ。朝の十時頃に〜》
というような意味になるので、おかしいですね。
だって、一月の半ばのことを言うとしているのに、十時頃に〜と、全く別のことを言っているからです。言いたいことにもよりますが、この文章だけで判断をするならば、
《一月の半ばの、朝の十時頃についていえば〜》
などとなるものですが、文章の妙を味わって頂きたいという思いから、現代文ではない書きかたをしてもいるわけですも、それをあえて、現代文として表わすのであれば、
《一月の半ばのことですが、朝の十時頃に〜》
となるわけです。
*これでも、《一月の半ば》のことを語っているわけですから、ここでの、《は》の使いかたは、合っているわけです。
さて、ここからが、小説や、漫画、創作物としては、とても大切なことで、それは何かと記せば、
《描写の順番です。》
- 吐く息が白い
では、まだ、登場人物の、顔も服装も、辺りも、観えてはおらずに、ただ、《白い息》が見えているわけで、大方の人は、ここで、季節の連想をするものです。
但し、こうと書けば、一部には、
- 冷蔵庫の中である
- 冷凍庫の中である
とか、
- 煙草の煙である
とか、そのような連想をするかたもいるわけですが、更に一部には、最初から、これらを思い浮かべる、想像力の逞ましいかたも、いるかもしれません。
ですので、次いでに、
- 一月の半ば
といった、季節の描写がくるわけです。
つまるところ、ここで、読み手が、季節ではなくて他のことを思い浮かべるのを、防ぐ為に、この白い息は、季節がらのことですよ。としているわけです。
さて、まだ、登場人物の容姿は明らかになっていませんし、場所も明らかではありませんが、読み手は、ここで、登場人物についての想像をします。
そこで、
- 朝の十時頃
といった、時間帯の描写があり、
- 服装
に繋がり、やっと、
- 登場人物の名前
がでてくるわけで、ここで初めて、読み手に、登場人物は女性であることが分かるわけです。
上のようなことを、誘導と言います。
良い意味で、読み手を裏切ることを考えて、こう考える人には、こうですよ。などと、次第に秘密が明らかになるミステリーという、小説のジャンルの王道を、《錠の1》の何行かで表わしたかったわけです。
ミステリーというジャンルを、この文にのせたかったわけです。
つまるところ、コントラストが大事。ということです。
ma1d3n Facebook yositaka akase
コメント
コメントを投稿