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【錠の21】
いざ面接の日に該当の店舗へと入るの△は店内をば一見しては店の隅やら商品の陳列をしておく為なるの棚の至るところに塵芥が堆積をばしておる様なるのが目に付きて其を少しばかりと気にしておれば其の中で水色と白色の縦縞の仕事着に其の身をば包んだ店員がさながらに機械のように業務をばこなしておるのに唖然としたが何時迄もそのままというわけにはいかずと一人の店員に
《すいません。面接のお願いをしたものなんですが…》
と声をば掛けた次第のことであるもこのようなる時の△は決して思うておることの終いまでをば言葉にすることはなく故意に中途で切りては其によりて引き起こされるる相手の挙動の一切の観察をばする癖ありここでも当然にして『面接のお願いをした者』の後に続くはずの『だからどうした』の部分を口に出すことなくに声をば掛けたる店員の挙動をば観察をしておれば其な店員が少し待てというもので了解をばすると別の店員にことのあらましを伝えに行くものであるにあいや仕方なしと観察をば止めたの△ではあれど僅かに何十秒かの間ではあれど声をば掛けたる店員の行動の切れ端を記憶に焼き付けることができたようではありが頭の中で捏ねておるのしばし後に先ほど声をば掛けたる店員から事情をば聞いたる店員が△のほうへと寄り来ては
《直ぐにオーナーさんが来られると思いますので、少しの間、裏で待っていて下さい》
などと言うのでそれをば了解としての△は
《あ、はい》
と応えたも返答の頭に『あ、』の付加をすることも△の癖の一つでありこれには相手の言を返答をする前に一端飲み込むことで充分に咀嚼をしておると思わせる為からのことでこれがあらかたは上手くいくようでありそもそも一般的なる思考回路を持つ者は経験則からそのように判断をした者でよしんばしどろもどろと思われたにしろこれが△の観察癖を更に上手くいかせておるのようであるが実際のところは咀嚼などはしておらずに只機械的にそう返しておるだけのことでありこれが中々に難しいようで△をして此れの習慣化をさせるまでにはかなりの月日を要したようであり周囲の者の大多数に△とはそのような奴であると自然に思わせねばならずにこれがまた骨の折れる作業であるようで継続は力なりと言う文句を正に現在進行形で証明をばしておるのようと考えてはおるようでさては狭く細くのまるで通路のようなる店の裏へと案内をされては椅子に腰掛け待つなるの十分と身の丈が百九十センチはあろうかという綺麗な白髪に似つかわしくないまるで河童の如くに頭の天辺が剥けたる齢七十歳前後と思しき男が来てからに
《どうも。オーナーの★です》
と言うものであるに其をば聞きし△行儀よくに立ち上がりては
《あ、どうも》
と軽くに会釈をばしたが★と名乗る男が
《まぁ、どうぞ椅子に掛けて下さい》
と促すものでではではと二人揃い椅子に腰をば掛けて取り敢えずは落ち着いての後に★
《では、履歴書のほうを観せて頂けますか?》
として△が履歴書を手渡すと一通り其に目を通していき
《ほう!色んな仕事をやっていますね。工場系の仕事まであるじゃないですか》
とその仕事は勿論嘘であるがその会社と関係がなければ知られることはなかろうと思うての所業で技術職であるとして聞かれた詳細にもこと細かに応えたものであるから幾らか感心をばしたように唸りおる★更に履歴書を観ていきその後に何故コンビニエンスストアでの仕事をやろうとしているのか?と具体的なる質問を投げ掛けたものでありこれに対して△は
《ひとつは差し当たっての生活の為からで、ひとつは私が産まれる前より、両親が飲食店を営んでいたものですから…》
などとこの応えにしても途中で言葉を切るようにしたものでこれに気が付いたのか★は一瞬なりと何かが咽喉の奥へと詰まるようなる挙動をばしてからに
《あぁ。稼業もあって、こういった、お客さんとかかわる仕事が好きだと言うことですか?》
などと△の言の補足をばするように聞いたも当の△とすればこの★と名乗る男が自分の言葉の補足部分をどのように補うかなどはどうでも良いことであるようではあれど
《はい!》
と今度は明朗快活に返答をばしたに其返事に快活であると一種の気持ち良さをば感じたのか★と名乗る男はいたく感心をば示したも既に△の術中に嵌りおるのこと気が付かじで普段から迷いとも受け取られることをば覚悟としての上から咀嚼をしてからの返答ということの印象を与えているからこその時折になされる明確なるの返答がより効果を上げていたもので其のようにしながらもの△此な★と名乗る男の挙動をばこと細かくに観察をばしていきのその後も充分に咀嚼をばしての返答と快活なる返答をば使い分けて★と名乗る男の好感を得ることに成功をばしておるようでありては其であるからか両者単なる面接ということを越えて話は盛り上がり不意に★が
《そう言えば、🍁工務店さんがオーナーをしているコンビニエンスストアは、どうなったか知っているかい?》
などと聞くものでその後も両者の会話は弾み
《さぁ。何でも、負債が50億だか70億だかとあるとか…工務店レベルでそれだけの負債を抱えると、どうにもならないとは思いますが、幾らかは支払っていると聞きますので…》
《そうそう。🍁工務店さんがオーナーをしているコンビニエンスストア自体は、まだ一軒残っているし、全部がダメになると返せなくなるが、あの人たちは、今何処で何をしているんじゃろうか?》
《あぁ。それなら、近々、お店をもう一軒持つそうですよ》
《そうなのか。それは良かったが、うぅ。怖い怖い。考えるだけで身震いするのぉ。ワシらも気を付けんといけんわい。ふふ》
などとあくまでも他人ごとというように話に花が咲いたも其な後に★が結ぶに
《じゃぁまた。採否の決定は、一週間以内にこちらから連絡をさせて頂きます》
とのもので△は既に自分は採用決定済みであろうと思えど挨拶をばして店舗を出たが★其れまでいたく機嫌の良き様でさては宅への帰り際に道向こうの目の前にある総合支所にと目をやりては『さては何時ぞやの市政関係者のこともあるのでこれから忙しくなりそうだけれど』などと未だ轟々としたるる怒り治らんはなどと役所行政の利用をばすることを考えたようであるが尾道駅からこちらに歩いた手袋の君のことも忘れずであるようであり其から二日後に★からの連絡が入りて取り敢えずの初日となる出勤日に加えて勤務日と勤務時間をば決めたのこと。
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